「狂気の王」カッサパ1世の壮絶な歴史と伝説が残る古代宮殿跡
シギリヤ王朝 5世紀、王位継承の疑心暗鬼から父親を殺し、異母弟を南インドへ追放した後、王に即位したのがカッサパ1世です。
しかし父親殺しという仏教における最大の罪を犯したカッサパ1世は、その罪の意識から逃れるように、そして弟からの復讐におびえるように巨大な天空の王宮シギリヤ・ロックを築き、その宮殿に自らの楽園を作り上げました。中座に鎮座する守護の獅子の像が南インドの方角を向いている事からも、弟の襲撃に備えていたことが分かります。
後悔の念が消えないカッサパ1世は、罪を償うべく善政に励みます。父を供養すべく描かれたシギリヤ・レディは、そんな孤独な王の罪を許すかのように今でも優しく微笑んでいます。
シギリヤ・ロックの宮殿がこの遥かなる高みに築かれたのも、少しでも天空の近くで父への祈りを捧げたかった孤独な王カッサパ1世の願いの表れなのでしょう。
その11年後、インドから戦いを挑んできた弟に敗れたカッサパ1世が自らの命を絶つとともに、シギリヤ・ロックの短い栄華の歴史は幕を閉じ、1400年の長い眠りにつきます。
シギリヤ・レディの謎と、時空を超えた落書き
ジャングルでの長い眠りについたシギリヤ・ロックが再び世に知られるようになったのが、1800年後半のイギリス探検家による岩石発掘です。密林から突如現れた巨大な宮殿とそこに描かれたシギリヤ・レディにさぞ驚いたことでしょう。
さてこのシギリヤ・レディに関しては非常に多くの謎が残って残っています。雲に乗っているように見える事から天国から現れた天女という説、カッサパ王の500人の愛妃という説など様々な伝説が残っています。また服を着ている女性についても、身分が低い侍女という説や胸の絵を失敗して服を着せたという説など様々。遥か昔の歴史物語や謎を反芻しながら散策するのも遺跡観光の魅力です。
また時間があれば、シギリヤ・ロックの反対側に位置するミラー・ウォール(鏡の回廊)にもお立ち寄り下さい。ここには約1000年間の間、ここを訪れた様々な旅人たちの落書きが時間を超えて今も残っています。中には「みんながシギリヤ・レディが綺麗と書いているから、私は何も書きません!」なんてユニークな落書きも残っています。昔の人も落書き好きだったんですね♪